最後の晩餐

昼ごはんを食べながら、こんな話をした。


「もし明日世界が終わるとして、最後の晩餐に何を食べる?」


ある人は贅を尽くしたフルコースだと言った。
今までの財産を全て投げ打ってようやく食べられるような、絢爛豪華な食の究極。身を削り、心を削って働いた、その財産全てが詰まった晩餐。
貯めこんだお金と思いを舌の上で躍らせながら、優雅に過ごす最後の晩餐。


またある人はやっぱりカアちゃんのおにぎりだなあと言った。
言った本人も、言われたみんなもなんか少し照れくさそう。
愛する人といつもの食卓。いつものメニュー。手製のおにぎり。愛妻おにぎり。
不揃いの形に文句を言いながらも、ぽつりぽつりと浮かび上がる思い出話に笑顔を重ねる最後の晩餐。


僕はチキンバーガーだと言った。
チキンバーガーて。最後の晩餐にチキンバーガーて。
もっと良いモン食えばお前は。もう、根っから貧乏性やなあ。
見た目からしてビンボ臭いんやからさあ、もうちょっと見栄張っていけや、もう。
なんか周りの反応は散々だった。


他愛無い話。
小さなレストランでそんな話に花を咲かせながら、僕達は注文の品が出てくるのを待った。
チキンバーガーの言われようは散々だったけど、
最後の晩餐もこんな風に、いつもと変わらない風景の中で、幸せに迎えたい。